リノベーション、団地問題など

 『建築雑誌』2018年3月号のテーマは

  • リノベーションのジレンマ
  • 生き残る郊外の条件

近年、ホテルへのコンバージョンなどが話題になっており、面白いテーマなので備忘録として記す。

ちなみに、リノベーションとコンバージョンという言葉がよく雑誌などで使われているが、違いは何なのか。リノベーションは用途変更をしない方法で、コンバージョンは用途変更を行う方法で、どちらも建物を改修してきれいにし、資産価値を高めるという点では変わりない。ここではどちらもひっくるめてリノベーションと呼ぶことにする。

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 日本におけるリノベーションの問題は2つある

一つは法律などの既存制度の問題、そしてもう一つは経済の問題。

まず、法律の問題について、

戦後にできた建築基準法は新築を前提としたもので、建物をスクラップアンドビルドすることを前提にしています。その方がGDPが伸びるという発想のもとに成り立っているものです。戦後に作られた法律は「フロー」をいかにコントロールするかという原理でできています。「ストック」をどう扱うかのルールを作らなければなりません。

例えば、団地のような区分所有建物。構造上区分され、独立して住居・店舗・事務所・倉庫等の用途に供することができる数個の部分から構成されているような建物を「区分所有建物」という。これをどう所有、管理していくかを定めたものが「区分所有法」です。そこではひとつの建物に複数の所有権が存在すると定義されています。さらに複雑なことに、国交省のマンション標準管理規約の団地型で想定している団地は、「土地が区分所有者全員の共有であること」「敷地内すべての建物が区分所有建物であること」「敷地内すべての建物が区分所有建物であること」「棟ごとではなくひとつの団地管理組合が全部の棟を管理していること」の三つの要件があります。この要件から外れてしまう、敷地が分かれていたり、戸建てと区分所有建物、分譲と賃貸が混在したりしているような団地は、非常に建て替えが困難な状況です。

 

次に、経済の問題、

大金を叩いてリノベーションしたとしても不動産評価額にはそれが反映されない。新築を前提として市場の構造や評価が変わらなければ、リノベーションに意味が見いだされない。

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高度経済成長期、郊外は地方から大都市へ流入する人口の受け皿であったが、今やライフスタイルの変化などもあり、郊外は居住地として選択されにくくなっている。郊外の大部分で人口減少が見込まれ、虫食い状に空き家が発生し、住環境が悪化するリスクを抱えている。住民の高齢化などによる担い手不足は管理不全を起こし、十分に修繕をされないストックが増えている。

近居かリタイアメントタウンか、そのどちらかが郊外の生き残る道と考えられる。

近居とは、郊外としての優位性を示し、中心都市とのゆるいつながりを維持し続ける方法で、 共働きファミリー世帯の子供のケアや高齢化した親のケアといった、近年課題となっている家族の機能を補完するもので、

リタイアメントタウンとは、役割を転換し独立したまちとして役割を再構築する方法で都心部の住居費の高騰を背景に、ゆったりとして空間を求めて若い世代が移り住む、職住近接で働く場としての郊外や、終の棲家・障害活躍の場としての郊外の可能性が考えられる。

 

【参考文献】

『建築雑誌』2018年3月号