空き家問題① 『建築雑誌』2015/06
近年、空き家問題が顕在化してきている。
空き家とは何なのか、なぜ問題になっているのか、どうすればよいのか、など
ここのところ勉強したことを書き連ねようと思う。
まず、空き家とは何なのか、についてやや抽象的に考えてみたい。
かなり抽象的な定義だが、
空き家とは「生きられる」という持続を一時停止した家である。
一時停止したということは再生できるということだ。
一方、廃墟はもう再び使うことのない建物のことを指す。
廃墟となった建物はもはや「物質」であり、空き家は「不在」を表す。
空き家には、無いということが有る。不在という存在力がある。
最初にかなりふわふわした話をしたが、このことは結構大切だとも思っている。
このことは、難しいことではなく、逆に、多くの人が当たり前と思っていて、皆そのことを忘れてしまっているような気がする。
空き家は再生できるということに気づくことが、今。空き家問題と向き合う上で最も大切な基礎となる。
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次に、空き家の現状について考える。
中国、四国、九州地方では、実は、空き家率が高い自治体が集中していることは近年起こったことではない。一方で、東北地方や北陸信越地方の空き家率はだんだん高くなり、また、ここ10年間は近畿、中京地方の空き家率も急激に増えてきている。平成20年を境に、空き家問題は一部の限られた地方の現象ではなく、都市部を含めた全国的な課題となった。
空き家は空き家でも、場所によって問題となる空き家の種類も違う。
空き家率が上位の地方都市では分類でいう「その他住宅」の空き家が多く、都市部では「賃貸及び売却用住宅」による空き家が多い。「その他住宅」とは、別荘、賃貸または売却用以外の人が住んでいない住宅を指し、居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建替えなどのために取り壊すことになっている住宅などである。
また、一住宅に居住する人数も空き家問題を考える上で重要な変数になる。空き家率の高い自治体では住宅に居住する人数の減少は緩やかであるが、神奈川県、京都府、大阪府、東京都、福岡県などの空き家率が比較的低い都市部ではその現象が激しい。一方で、空き家率が高く、住宅に居住する人数も少ない自治体は高知県と鹿児島県となっている。
以上のことから、従来から空き家率の高い地域では、居住世帯の長期不在による空き家率が多いものの、世帯単位では一定の人数を維持している。それに対して、都市部では賃貸住宅による空き家が多く、世帯人数も1人や2人が増加している。
空き家問題といっても、地方と都市部で生活像が異なり、課題も違ってくることに注意しなければならない。
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次は、なぜ、空き家が発生するのか?
意外と人口の流失がダイレクトに空き家の発生につながるわけではない。
そのことは人口転入超過数の推移と、空き家率の高い都道府県を比べるとあまり相関がないことからいえる。
ざっくりというと
- 少子高齢化
- 生活インフラの脆弱化
これらが主な理由といわれている。
少子高齢化によって、相続者が居らず、空き家になってしまうパターン。また、子供がいても、はたらくと都会に行ってしまい空き家になってしまうこともある。それだけではなく、在宅生活が厳しくなった高齢者が老人ホーム住まいになり、空き家になることもある。
先ほど、人口流失と空き家率に相関はないと書いたが、しかし、空き家率を食い止めるためには、若年人口の定着がマストであり、人口流失は空き家率の回復の邪魔をすることには注意しなければならない。教育インフラの整備は今後の日本を考えていく上で大切な課題であることは間違いない。