新国立競技場の論点
ここのところ
新国立競技場の問題
が加熱している。
その背景には6月いっぱいで来年度の予算を決めないといけないという事情がある。それはさておき、加熱しているがゆえに、いろいろな意見がネット上にあふれ、結局何を考えるべきなのか、というのが不明瞭になっている。
まず、新国立競技場ザハ・ハディド案とかが出てくるまでの経緯について振り返る。
1964年の東京オリンピックのメインスタジアムを担った国立競技場を大改修し、7万人が収容できる規模に拡大するという久米設計の「国立霞ヶ丘陸上競技場耐震改修基本計画」があった。
http://2020-tokyo.sakura.ne.jp/_src/sc803/89FC8FC92B28DB88Bv95C48AT97vHi.pdf
これは、2008年に実施した耐震診断の結果を踏まえ、2010年にJSCが久米設計に計画立案を発注し、2011年3月にまとまったものです。
JSCはこの案になかなか決定をしなかった。
その理由は、
- もともとが小規模のため、機能改善にも限界があること。
- バックヤード空間(飲み物の在庫置き場等)の不足。
そんな中で、政治の世界で異変が起きる。
2011年6月にスポーツ基本法が制定され、国立競技場の再整備がその基本計画に盛り込まれた。
2011年2月に、超党派議員連盟の「ラグビーワールドカップ2019日本大会成功連盟」が、国立競技場を8万人規模のスタジアムとして再整備するべきだと総会で決議し、同年6月にはスポーツ基本法が国会で制定され、翌2012年に策定されたスポーツ基本計画では、JSCは「国立霞ヶ丘競技場等の施設の整備・充実等を行い、オリンピック・ワールドカップ等大規模な国際競技大会の招致・開催に対し支援する」と定められた。
JSCは、「相当にアクロバティックな手法を使わない限り、8万人規模を改修するのは不可能」と判断し、改修案を断念して、国立競技場を全面的に建て替えることを決定した。
そこで、問題の新国立競技場のコンペが開催された。
審査の条件は以下の通りです。
(以下、抜粋。引用元:
新国立競技場、「ザハ」なぜ選ばれた 審査激論の中身 :日本経済新聞)
(以下、抜粋。引用元:
新国立競技場、「ザハ」なぜ選ばれた 審査激論の中身 :日本経済新聞)
このコンペの結果選ばれたのが、ザハ案です。
その理由は以下の2点だと思います。
- 世界的に著名な建築家の優れたデザインだから。
- 技術的にチャレンジングな案で取り組み甲斐がある建築だから。
建築関係者の中でも、このザハ・ハディド案が決まった時点で、この案がかなり無茶であることは明らかだったが、まだオリンピックがくると決まったわけでもないので、声高に批判する動機はなかった。
当初からこの案について、警鐘を鳴らし続けている建築家が槇文彦さんです。
10+1 web site|新国立競技場の議論から東京を考える|テンプラスワン・ウェブサイト
景観的にもおかしいし、稼働率を考えるとそんな大金注ぎ込む意味も分からないし、維持費も大きい。無理をして大きな屋根をつけようとするのがそもそもおかしいというのが、ざっくりとした槇さんの意見です。
これまでの問題点をざっくりとまとめると以下の通りです。
-
このような重要なプロジェクトにも関わらず、久米設計の改修案しかり、新国立競技場コンペしかり、これまでそのようなコンペがあることなどすら事前に公にされてこなかった点。
- 機能や維持の問題が重要なのに、最初にデザインを選んでしまった点。
- 国、東京都、有識者会議、施工者、誰もが責任の投げ合いをしている点。
その他にも、なんで屋根がついていないといけないのか、天然芝じゃないとだめなのか、都市計画や景観、人口減少社会にこんなものいるのか、などなどあらゆる観点から問題があると思います。
このままでは、デザインもダサいわ、維持費も高いわ、使い勝手もいまいちという誰も納得していないものができてしまうかもしれない。そのことが、避けるべき課題だと思います。ザハ案を参考に、維持費やオリンピック後のことも考えて修正するところは修正して、金銭的にも、技術的にも、本当にできるのか、どのようなものができるのか、公に開き議論していき、何もザハ案をそのまま作る必要はないんですから、ザハ案と庶民の案の折衷案のようなものができればと思います。